和物の小話ー『獅子と牡丹』編
図柄は掘り下げると面白いシリーズ NO.2
『獅子と牡丹』
着物や、器に描かれている絵から、沢山のことを知ることができます。
前回は、「葡萄と栗鼠(リス)」が描かれた絵が多いのは「武道を律する」という意味から喜ばれたとご紹介しましたが、本日は「獅子と牡丹」の関係についてお話ししてみたいと思います。
今では、十四代続き鍋島焼を継承する今右衛門家ですが、江戸時代は、鍋島藩で焼かれた鍋島焼の赤絵のみを担当していた赤絵師でした。
江戸から明治に移り変わり、藩が解体され、それと共に鍋島藩窯は姿を消します。
当時の今右衛門家は、藩の後ろ盾をなくし、自力で生産から販売までを担うことになります。
そのため、十代今右衛門は、様々な作品の研究に勤しみ、伊万里焼き・柿右衛門様式・鍋島焼、様々な磁器を作り上げます。
その精神を受け継ぎ、江戸中期の最盛期と呼ばれる物作りができた水準にまで戻したのは、十一代今右衛門でした。
本作品は、伊万里風ということもあり、中央の獅子の描き方がやや伊万里焼きの粗さを意識しているようにも感じますが、その他の部分はとても丁寧に描かれ、十一代今右衛門の緻密な表現が伺える作品です。
そして、今回のポイントは、、、、
その、ちょっと手抜きのように描かれた「獅子と牡丹」についてです。
磁器の作品の中で時折「獅子と牡丹」が一緒に描かれているのですが、強いイメージの獅子が可憐な牡丹と共に描かれ、いつも、どことなく牡丹に寄り添う獅子の弱そうな感じ…
意外なコンビに少し疑問を抱いておりました。
でも、そこにはしっかりと意味があることを、本日はご紹介いたします。
弱そうな感じ…。。。という処は、実は大きなポイントだったりします!
「獅子と牡丹」
百獣の王として君臨する獅子。
無敵の強いイメージがありますが、その獅子でも、唯一恐れているものがあります。
それは、「獅子身中の虫」と言われ、獅子の体毛に寄生し、増殖、後に皮を破り肉をむしばんでいく害虫です。
内側から獅子の命を脅かす存在がいるのです。
しかし、この「獅子身中の虫」は、牡丹の花から滴り落ちる夜露にあたると死んでしまうことから、獅子は牡丹の花の下で休みます。
だから、牡丹に寄り添う獅子は、どこか弱い様子に描かれているのかもしれません…。なんて絵から描き手の気持ちを感じ取ってみたりするは、おもしろいです!
これは、「どんなに大きく強いものでも、内部の裏切りや悪いことから身を滅ぼすことにもなりかねないということです。あなたにとって、安住の地は何処ですか。」という仏典から出た言葉です。
磁器の作品の柄になるものには、このような小話があることが多々ありますので、ぜひ、気になった時は調べてみると面白い発見ができるかもしれませんね(^^♪
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京都美商ギャラリーは、1961年に京都下鴨で創立した西洋アンティーク・肥前磁器の専門店です。長年蒐集をしてきた経験をもとに、オールドバカラやオールドフランス、古伊万里や柿右衛門などを取り扱っております。量産品ばかりの近年では見られなくなった職人技、手作りの温かみの魅力をより多くの方に身近に感じて頂きたいと考えています。
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