京都美商ギャラリー 京都美商ギャラリーは、1961年に京都下鴨で創立した西洋アンティーク・肥前磁器の専門店です。長年蒐集をしてきた経験をもとに、オールドバカラやオールドフランス、古伊万里や柿右衛門などを取り扱っております。量産品ばかりの近年では見られなくなった職人技、手作りの温かみの魅力をより多くの方に身近に感じて頂きたいと考えています。

ハンケイ500m(Vol.42)- 連載2 東洋磁器への熱望から誕生したマイセン窯

-ハンケイ500m 連載2-

京都の「本物」を特集するフリーペーパーに6回の連載を掲載:2回目

                 

ヨーロッパで白熱する柿右衛門蒐集

 元禄年間、肥前有田の磁器はヨーロッパのオークションで熱狂的な喝采を博します。なかでもぬきんでていたのが、ポーランド国王にしてザクセン選帝候でもあったアウグスト強王。日本工芸品のコレクターとしてはいまでも彼が世界一であり、その情熱が高じて、マイセン窯を起ち上げたのです。有田には3つの様式があり、輸出用は柿右衛門様式、朝廷・幕府など国内の献上用は鍋島、一般仕様が伊万里とそれぞれきまっておりました。ちなみに、鍋島が献上用になった経緯は、関ケ原の戦いで鍋島藩が負けたことに起因します。朝廷、徳川幕府、全国の有力大名筋へ、鍋島藩は焼物を贈呈します。今でいう賄賂的な役割があったと考えられ、磁器をおくることによって、自分達はこれほど優れた製品を作ることができる、という技術力を見せつけるわけです。それゆえ、現在でも、皇室の方が会見される背後には鍋島の作品が飾られることもあります。そして、政府が外交に行く際、たとえば総理が各国の大統領や首相などと会談される時、磁器のお土産には柿右衛門が贈られます。300年前の法則が、いまも踏襲されているのです。
 

柿右衛門様式 竹虎梅図皿 1680年
柿右衛門様式 竹虎梅図皿 1680年

 

最大級の花瓶と欧州屈指の騎馬兵団を交換

 

 現在、古伊万里は1つ200~300万円、それが当時はおそらく1億円を下らなかったでしょう。なぜならヨーロッパでは焼けない磁器を、一年がかりの航海によって命懸けで運んで来るわけですから、相当な値打ちがあるわけです。ヨーロッパの貴族たちがどれほど日本の焼物に夢中になっていたかを知る逸話があります。当時、一番大きな有田の壺は75cm。そこへ東インド会社の要望で世界一大きな壺を作れというミッションが下されます。それを有田で当時一対だけ作っています。1m30cmを超えるほどの大きさで、ちょっと歪んでいるけれど、法外な値段が付きました。それをアウグスト強王は手にいれることができなかったのです。
 オークションで勝つことは、戦争で勝つことに等しい。意地の見せ合いで、最大級の有田の珍品が、思わぬところまで競り上がり、アウグスト強王は思わずひるんで負けてしまった。それが悔しくてどうしてもほしくない、競りに勝ったプロイセン国王に密使を送り、圧力をかけます。
そして、プロイセン国王は譲渡することを承諾しますが、「ただしあなたの一番大切な物と交換しましょう」と条件を付けます。あろうことかアウグスト強王は、ヨーロッパいち強い自分を守る龍騎馬兵団と、有田の大壺とを交換するのです。後年、手放した龍騎馬兵団に攻撃されるというおまけもつきます。美術品は観て楽しむだけではなく、外交、力を誇示する象徴なのです。

柿右衛門への熱狂がマイセン磁器の嗃矢

 

マイセン色絵 竹虎梅図皿
マイセン色絵 竹虎梅図皿 1930年頃 柿右衛門の絵柄を模倣したものは現代でも人気があります

 

 このように焼物には確かな価値があり、ならば自国で作りたいとアウグスト王は考えました。そこで19歳の錬金術師:ヨハン・フリードリッヒ・ベドガーを城に監禁し、「白い金」と呼ばれた東洋磁器の秘宝を究明させます。それから、艱難辛苦の果て、ついにヨーロッパ初の白磁製造に成功、1710年にマイセン窯が誕生します。そこから、柿右衛門の需要は途絶えます。酒井田柿右衛門は現在15代。初代から5代まで世界の注目を集めた後、歴史に埋もれた謎の空白期間を経て、十二代柿右衛門が台頭します。そして十二代・十三代が昔ながらの柿右衛門の伝統技法「濁手」を復活させました。

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京都美商ギャラリーは、1961年に京都下鴨で創立した西洋アンティーク・肥前磁器の専門店です。長年蒐集をしてきた経験をもとに、オールドバカラやオールドフランス、古伊万里や柿右衛門などを取り扱っております。量産品ばかりの近年では見られなくなった職人技、手作りの温かみの魅力をより多くの方に身近に感じて頂きたいと考えています。

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