今右衛門

今右衛門

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10000


右から十一代・十二代・十三代・十四代 今右衛門氏 肖像

今右衛門

今右衛門の歴史は、肥前・有田を舞台に、鍋島藩窯の色絵付を担った御用赤絵師の家として始まります。
佐賀の地には良質な陶石が眠り、1610年代には日本初の磁器が誕生しました。磁器産地として発展の途を歩む中、色絵(赤絵)の技法が中国から伝わると、優れた赤絵師を擁する今泉今右衛門家は、鍋島藩より御用赤絵師として選ばれ、献上品や城内器の色絵付を任されることになります。
赤絵町に工房を構えた今右衛門家では、斎戒沐浴のうえで色絵付が行われ、赤絵窯の周囲には鍋島藩の紋章入り幔幕や高張り提灯が掲げられました。藩工の監督下で焚かれる赤絵窯は、当時の緊張感と格式を象徴するものであり、そこから生み出される色鍋島は「本朝無類」と称されるほど高い完成度を誇りました。

近代への転換 — 十代・十一代が切り開いた再興の道

明治維新とともに御用制度は消滅し、今右衛門家は大きな転機を迎えます。十代今右衛門は、かつての鍋島様式の再現を志し、自ら登り窯を築き、赤絵のみならず素地の焼成にも挑みました。経験不足から失敗が続いたものの、白磁の狛犬の制作などで高い技術を示し、後の今泉家の方向性を決定づけました。
十一代今右衛門は、行商にも自ら赴き、時代の変化を敏感に作品へ反映しながら、古伊万里や鍋島藩窯品の再現にも成功します。絵筆をとれば「右に出る者なし」と評され、宮内庁御用達を許されるなど、その技術は広く評価されました。世界恐慌や戦時下で販路を失っても創作を止めず、古典と近代を融合させる新たな方向性を追求し続けました。

技術の深化 — 十二代・十三代が生み出した新しい様式

十二代今右衛門は研究熱心な人物として知られ、連房式登り窯を単窯に改良するなど、陶技の革新に取り組みました。鍋島様式の繊細さを継承しつつ、壷・花生といった新しい器形へ独自の感性を展開しています。昭和46年には彼が代表を務める「色鍋島技術保存会」が重要無形文化財の総合指定を受け、今右衛門家の技術的地位は不動のものとなりました。
十三代今右衛門は、吹墨・薄墨・吹重といった独創的な技法を生み出し、鍋島様式に現代性を融合させた人物です。確かなデッサン力と意匠の構築力により、作品は新しい息吹を帯び、平成元年には人間国宝に認定されました。美術作品には彫り銘、量産品には染付銘と、作品の性格を明確に区別した点も特徴的です。

現代の今右衛門 — 四百年の伝統と新意匠

十四代今右衛門は、伝統的な吹墨・薄墨・緑地の技法を受け継ぎつつ、革新的な表現を積極的に取り入れています。白の微妙な差異を際立たせる「雪花墨はじき」や、光を取り込む新しい上絵「プラチナ彩」などは、伝統と革新の双方を示す代表的成果です。平成26年、十四代は最年少で人間国宝の認定を受け、現代色鍋島の新たな可能性を切り開いています。

今右衛門の芸術性 — 伝統と革新の協奏

今右衛門家の作品には、四百年以上続く鍋島様式を支える高度な技法と、各代が追求してきた革新的精神が共存します。草花や器形に宿る品格、精緻で透明感のある色絵、そして時代とともに変容する独自の表現。
そのいずれもが、藩窯以来の厳格な美意識と、現代に生きる創造の息吹との調和によって育まれてきました。
今右衛門は単なる「伝統の継承者」ではなく、常に新しい美の可能性を求め続けてきた創造者であり、その歩みは今日も続いています。

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