Daum

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価格

10000

ドーム(Daum)

ドームの物語は、ガレとともにアール・ヌーヴォーを牽引した都市ナンシーを舞台に始まります。パリから東へ約300キロ、豊かな地下資源を背景に重工業が発達する一方、ガラス・陶器・金属細工・家具など、多彩な工芸が息づく地でした。
ドーム兄弟の父ジャン・ドームは、公証人として働くかたわら、経営難に陥った知人のガラス工場を救うべく融資を行います。ロレーヌ地方の小都市ビッチュで親交を結んだガラス職人への信頼と、ガラス工芸そのものへの情熱が彼を後押ししました。
やがて債権は回収できず、ジャンは不慣れな工場経営を担うことになります。後に長男オーギュストが「父の行動を決めたのは、理性よりも情熱だった」と語るように、この選択こそがドームの未来を開き、1878年、工場は「ヴェルリー・ド・ナンシー」と名を改め、今日のドーム社の基盤となりました。

アール・ヌーヴォーへの転換 — 芸術部門の誕生

父ジャンの没後、工場を継いだのは長男オーギュストと三男アントナンでした。彼らは当初、コップや時計用ガラス板などの実用品で工場を支えていましたが、エミール・ガレの成功を目の当たりにし、1891年に工場内へ芸術部門「アトリエ・ダール」を設置します。
この決断により、ドームは芸術ガラスへ大きく舵を切り、後に数々の名作を生み出す創造の場が誕生しました。

芸術性と伝統技法 — 共同制作が育んだ表現

ドームは画家や金工家など、多様な専門家との協働によって独自の作風を築き上げました。新技法の開発にも取り組みながら、エナメル彩など既存の技術を極めて高度に用いることで、繊細で詩情に満ちた作品を生み出していきます。
草花や風景といった自然を主題とする作品には、どこか印象派の面影が漂い、難解さよりも柔らかな明るさがあり、誰もが美しいと感じられる普遍性を備えています。

様式の広がり — 四季の詩情から印象派的表現へ

エッチングとエナメル彩を組み合わせた「ヨーロッパの四季」は、自然の移ろいを丹念に描いた代表的シリーズです。急速に工業化が進む当時にあって、あるがままの自然の姿を映し出すこれらの作品は、多くの人々に新鮮な感動を与えました。
また、ドームが特許を取得した「ヴィトリフィカシオン」による多彩な地紋は、春を告げるりんごの花やナンシーの夏のゼラニウムなど、身近な植物を題材とした作品に明るい印象派的な表情をもたらし、ドームの象徴的な意匠となりました。

高度な技術 — 自然の生涯を描く

ドーム作品の中でも、花の一生を描いたシリーズには工房の思想と技術がもっとも深く反映されています。球根を思わせるフォルムの花瓶には、咲き誇る姿からやがてしおれていくまで、植物の全てが丁寧に表現されています。
表面に溶着されたガラス片にはラメル技法が用いられ、さらに素地と一体化した後、グラヴュールで細部が掘り出されます。こうした丹念な工程と、ヴィトリフィカシオンの鮮やかな色彩、確かなデッサン力が、ドームの作品に独自の深みと詩情を与えているのです。

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