説明

 スイカズラの花が可憐なビスケットボックス

今回ご紹介するのは、ピンク色のお花が浮かび上がるような、とてもかわいらしい入れ物です。
ビスケットボックス、ビスケットジャーや、ビスケットバレルなどと呼ばれ、クリスタル、陶器、銀製など、様々な種類のアンティークビスケットボックスがあります。

ビスケットが宮廷で食べられるようになるのは16世紀後半と言われ、そののち、20世紀初頭のヨーロッパでは、今よりもスイーツが食べられていたといいます。
現在にいたるまで長く愛され、今でも、パリでカプチーノなどを頼むとソーサーにビスケットがちょこんと置かれています。

　
しかし、このビスケットボックスは、お菓子用としてだけではなく、食後のシャンパンと共に頂くビスキュイ・ア・ラ・キュイールをいれていました。
大きさが10センチほどのスティック状のお菓子で、湿気にも乾燥にも弱いために、このような器にいれてテーブルに運び、シャンパンと共に食後の時間を優雅に楽しんでいた時代。お菓子の入れ物も、その用途に合わせて専用で作られていました。
多くのビスケットボックスが同じようなサイズと形だったので、不思議に思っていましたが、ゲストをおもてなしするために、見た目が美しい入れ物は重要なアイテムとなり、樽型のビスケットボックスを多種多様に展開していたこが理解できます。

「ビスケットバレル」とも言われると冒頭で伝えましたが、バレルbarrel＝「樽」という意味です。

余談ですが、お茶葉が高価な時代は、お茶葉専用の入れ物が作られ、鍵がついていたようです。

作品の技術に話を戻しますと、上質な金を使って発色させた赤は、鮮やかなピンクのような色合いになります。

当時の贅沢な物作りによって作られたアンティーク特有の赤色を好まれるかたが多く、この作品は、スイカズラの花が曲線ではかなげに美しく表現されています。

スイカズラ（吸葛）という花は、日本原産の花ですが、ヨーロッパに渡り、国土の気候が合ったことと香りの良さからヨーロッパで広がり、フランス文学にもよく名前を目にするほど、日常的な花となりました。

そして、バカラは、この花を、アール・ヌーヴォーを代表するテクニックの一つと言える、エッチング技法を使って仕上げています。

写真の地の白い部分は、フッ化水素酸により酸に浸して腐食させ、シダの葉のような地模様を彫りこみます。この新技術が1864年に確立すると、一躍エッチングの作品は20世紀初頭のフランスで貴婦人に愛され、さまざまな作品が作られるようになります。
残念ながら、この技法は、作業工程ででるガスが人体に影響があるとされ、わずかな期間しか作ることができず、今ではオールドバカラを代表する技法として人気を博しています。

そして、この作品を豪華にみせているのは、蓋や取手のブロンズです。ぐねぐねと曲線でデザインされ、まさしく曲線美が美しいとされたアール・ヌーヴォーを印象づける作品と言えるでしょう。

テーブルに置いても華やぐビスケットボックスです。

【参考】
・1936年より前の作品のため、マークはございません。
・カタログレゾネに同モデルが掲載されています。
　※取っ手のブロンズは、数種類あります。
・底の部分に気泡などが入っていますが、当時の物つくりではこのようなものはございます。

オークションは終了いたしました。
誠にありがとうございました。

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担当：大野
定休日：水曜日

作品の状態と取り扱いについて

アンティークの作品には、気泡やガラスのヨレ、製作過程でのキズ、スレなどある場合がございます。
現代のクリスタル製品の取り扱いと大きな違いはありませんが、衝撃を避け、電子レンジのご使用はお控えください。
洗浄は、熱湯や研磨剤を避け中性洗剤をご使用ください。金彩装飾のある場合は、剥落を避けるため強くこすらないでください。食器洗い機による洗浄はお控えください。ご使用後はなるべく早めに洗浄してください。
　

ランクについて

A　美しい
B　やや使用感がありますが美しい
C　アンティーク特有の使用感があります
D　使用感や小傷があります

作品と一緒にお送りする特別な贈り物

井村美術館に属するAJA鑑定協会が発行する鑑定書付き

京都美商株式会社が出版する書籍

お知らせ

世界的に大きな影響を与えているコロナウイルスが一刻も早く収束することを願い、オークション収益の一部を、「新型コロナウイルス感染症：拡大防止活動基金」へ寄付いたします。

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