2018年のクリスタル旅行記⑤ ナンシー:アール・ヌーヴォーの街
アール・ヌーヴォー発祥の街
スタッフの旅行記-⑤
ベルギーブリュッセルから、ルクセンブルグを通過して、ナンシーへ到着!
ナンシーはフランスの街の名前です。
エミールガレを筆頭とし、アール・ヌーヴォーを展開するナンシー派と呼ばれる集団が活動した街なので、京都美商で扱う作品と関わりが深く、わくわくしながら街の中を車で通過中…
アール・ヌーヴォーっぽい建物を見つけられるかな?ときょろきょろしていると…
すぐに見つかりました!
E. Andréという建築家が1903年に建てた建物で、デザインとその装飾がまさしくアール・ヌーヴォー!
すてきで思わず車から出て見入ってしまいました。街についてすぐにこんな建物と出会えるとなると、これからの先の発見が楽しみなります!
って、「アール・ヌーヴォー」と連呼しておりますが、そもそもアール・ヌーヴォーってなんぞや…
いろいろ、深く掘り下げると、膨大な時間が必要になるので簡単にまとめてみました。
アール・ヌーヴォー
19世紀末、産業革命により機械化により大量生産が当たり前の世の中になります。
でもですね、19世紀の機械ですから、、、
今のように出来の良い機械な訳ないので、安価で質の悪いものが世の中にあふれ出します。
デザイン性もなく、使いにくい、
でも、それを使わなくては…
しかし、当時、豊かな暮らしをしていた人々からすると、
「ん。使わないといけない?」
「いやいや、まてまて、それっておかしくない?」
という疑問が生まれ始めます。
「生活の中にも感性は必要!」
「職人の技術が必要!!」
と感じ始め、イギリスでアーツ・アンド・クラフツ運動がはじまります。
職人が思いを込めて作る作品に宿る感性の高いものは生活に必要と考えが一転していくのです。
そして、その後、同じような流れがフランスで起き、それがアール・ヌーヴォー(新しい芸術)と呼ばれています。
アール・ヌーヴォーの特徴といえば「曲線美」でしょうか?
曲線は当時の機械ではつくることが難しい、、、、
という具合にデザインに感性を入れ込み、曲線美でさまざまな物を作りあげていく時代になります。

アール・ヌーヴォ時代の家具
曲線美っていうことがうまく伝わらないかもしれませんが…(笑)
家具の足や、棚、そしてランプの枠などにみられる曲線はアール・ヌーヴォーといえます。
このような曲線は職人の手でしか作ることができませんでした。

生活に必要な小物までもにその特徴がみられます。
京都美商にある下図のクッキージャー、とってもかわいいんです(^^)/
取っ手の部分や、蓋のところがくねくねとしていませんか?
まっすぐでもいいのに、あえて手を加える!!
こういった雰囲気もアール・ヌーヴォの特徴を含んでいます。

クッキージャー
実は、アール・ヌーヴォーの前段階では、ジャポニズムが爆発しています。
東洋がただ珍しいというわけではなく、日本の精神論に付随します。
日本から送られた美術工芸品は、職人の手仕事がしっかりと受け継がれ、余白の美がある。
そして、主題に昆虫や草花を描いている。
トンボやカゲロウといった生命の短い虫、道端に咲く草花にスポットをあて、その生命のはかなさに自分を投影する日本人の精神。産業革命後の時代背景、状況のすべてが合致し、ジャポニズムが生まれ、その後、アール・ヌーヴォー(新しい芸術)へと移り変わります。
そして、その想いをガラスで表現した有名な作家がエミール・ガレです。
彼の作品は、どこか狂気も感じられるのですが、白血病であったため、自分の命の短さを表現していたのかもしれません。
水面に死にゆくトンボが落ちてゆく一瞬を巧みに表現している花瓶や、
数日間で成長すると、夜に笠を開き、一夜にして柄だけを残して溶けてしまう「ひとよ茸ランプ」は日本でも大変有名です。
このページではそれらの有名作品画像を入れ込むことができないので、京都美商のガレ作品でご紹介

ナンシーの豊かな自然の中で育ったガレは、動植物、沼の泥水、海底世界の生命、ウイルスやバクテリアの生命力に魅了され、観察した昆虫や植物を意匠に用いました。

ガレは、アトリエの入り口に「私の根源は森の奥深くにある」と刻んでいます。
と、、、そんなガレの愛したナンシーの「街」に戻りましょう!!
目的地に到着したのは夕方。
広場を中心としたところからをぶらっと歩きながら散策してみました。
広場には門がいくつかあるのですが、ロココ調のスタイルに夕日が幻想的です。
見えにくいですが、噴水があり、像はギリシア神話の海と地震を司る神:ポセイドンです。
そして、夜になるとこの広場の雰囲気がガラッとかわる。
市庁舎に向けてプロジェクションマッピングによるライトアップがされていました。
ガレが現代に生まれていたら、あのような作品を生むことはできなかったかもしれませんね(^^)/

この光と音によるイベントは23時前ぐらいまでやっていたと思います。
調べてみると、毎年(?)6月中旬から8月中旬まで毎日行われているようです。
3か月間、ほぼ毎日行われて、時間も遅くまでやっていると思うと、発想も規模も寛大だなぁと関心しました。
ナンシーにいかれる際には、ぜひ事前にチェックしてみてくださいね。
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